原著
人工妊娠中絶術に於ける硫酸スパルチン(スパチーム)の使用経験
小山 勝
1
,
関政 起
1
,
金原 節子
1
1豊科日赤病院産婦人科
pp.837-844
発行日 1955年9月10日
Published Date 1955/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201242
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緒言
人工妊娠中絶術(子宮内容除去術)によつて起る障害としては子宮穿孔,頸管裂傷,出血,感染並びに内容遣残等を挙げることが出来る。
従つて人工中絶術を行う為には,此等の諸点に注意が肝要である。中絶手術に際しては子宮筋が牧縮状態,又はその準備状態にあることが望ましく,従つて子宮牧縮剤の投与が提唱されている。此際の子宮収縮剤としては,従来麦角剤,脳下垂体後葉剤が主なるものであつたが,手術の性質上,速効性と持続性,収縮後の弛緩なく,力価の安定,種々の不快なる副作用のないことが望ましい。硫酸スパルチンC15H26N2はエニシダに含有される主要アルカロイドであり,1851年Sten-houseにより抽出されて以来,強心利尿剤として研究の対称となつていたものである。1916年岡本Heathcote等の動物実験によつて子宮収縮作用のあることが認められ,1939年Kleinが創めてこれを陳痛促進剤として臨床に応用した。本邦に於ては,木原,真柄,安井氏等によつて,その臨床価値の優秀性が報告されて以来,多くの人々によつて詳細なる研究がなされ,子宮収縮剤としての「砒酸スパルチン」は前述の諸条件を満足せしむるものとして広く応用されるに至つた。
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