原著
妊娠時に見られる赤血球沈降反応促進現象の相関因子解析に関する研究—(第5報)妊娠時に於ける赤沈値に対する血漿蛋白各分屑値の眞相関並びに疑相関の検定について—偏相関検定
長尾ミト子
1,2
1東京医科歯科大学医学部生化学教室
2東京鉄道病院産婦人科
pp.513-520
発行日 1955年4月10日
Published Date 1955/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201180
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〔I〕緒論
妊娠時に於ける赤沈の促進現象は妊娠変化の中でも特に目立つた特異現象として従来より注目されて来た事である。しかしこの現象が如何なる機序によつておこるものであるかと云うことは未だ完全には解析されておらない。これらの機序の解析は妊娠時に於ける身体変化についての検討に資する点も極めて多いが,一方又未だ完全には解析しつくされておらない一般の赤沈の機序に対する解析に対する一つの有力な示唆を与えるものとして注目された。
著者は第1報より第4報1〜4)にかけて無作為に抽出された健康妊婦197名について一方に於いては赤沈臆を測定検討しながら,同時にそれらの促進叉は遅延因子と考えられる各種の血液諸性状を測定し,それらの間に如何なる単相関が存在するかを推計学的に検討したのであつたが,すでに第3報及び第4報に於て述べた通り,妊娠時の赤沈の促進は確かに一面において赤血球の性質即ち赤血球比重関係量としての(GB—GP),(GB—GS)及び赤血球一ケーケの容積即ち所謂赤血球平均容積(Ht/R)等に単相関を示すと同時に他面において血漿蛋白の各分屑中Al.と(−)の単相関を示し,叉α—,β—Globulin, Fibrinogenとは(+)の単相関を示すが,γ—Globnlinとは正負共に相関を示さないと云うことを知つた。
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