原著
乳汁分泌開始期を巡る尿係数(O/K)の消長
岩下 芳彦
1
1北海道大学医学部産婦人科教室
pp.61-63
発行日 1955年2月10日
Published Date 1955/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201146
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緒言
乳汁分泌現象は種々なる内分泌的又神経的要素のもとに営まれ,分娩と云う精神的肉体的激変後に急激に開始される極めて複雑な性現象の一つであり之が機序に関しては.或程度内分泌学的に解明されている。然して,本現象は臨床医学的立場より見て生理的とは云え,生体反応側より之を眺めるならば,生体内には相当高度の変動が惹起されているに相違ない。我々は斯る変動を物質代謝の一面よりうかがわんとし,余等が従来より用い来つたVakat—沃度酸法(特に尿係数O/K)を用いて観察してみた。抑々O/Kは,1950年西風氏により,Bickelの提唱するVakat-O/N (尿酸化商)を修正し,尿Vakat酸素(O)と尿沃度酸値(K)との比,即ち尿Vakat沃度酸値係数(O/K)として発表されたものであつて,以来更に検討改良されつつあるが,我々は之を臨床医学,実験医学の面に広く応用し,就中排卵と云う微妙の変動をも察知するに成功し,1951年,排卵期判定新法(小川)として発表されたものである。然して泌乳現象を巡る種々なるホルモンの動きによつて惹起された生体反応に対し,O/Kは興味ある消長を示したので此処に報告する。
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