原著
我が領域開腹術時に試みた靜脈麻醉の経験
小林 敏政
1
,
中西 寿子
1
,
小林 茂
1
1都立大塚病院産婦人科
pp.331-336
発行日 1954年6月10日
Published Date 1954/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201039
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信頼して居るとは云うものの開腹術時の患者の不安恐怖は格別のものであろう。この恐怖は又最悪の結果即ち死に対する深刻な不安となり,これが疼痛を伴つた時には術中の器具の音,会話,勤務者の動静に神経を尖らし,これが手術の遂行を妨げることさえありうると考えられるから,この不安恐怖の除去は疼痛そのものの対策と同じく軽視し得ないと思う。
局所麻酔は意識が完全に正常であるべきが原則で,これが長所であり,中枢への作用を出来るだけなくし末梢神経の麻痺作用を強力ならしめ患者と談じつつ開腹術を遂行することが出来る特徴をもつて居るが,如何に完全に実施し得た場合でも,この不安除去の効果は少く中ば患者の諦に俟つ外はないのではなかろうか。多くの婦人はこの不安恐怖が--殊に神経質の婦人に於いてはそうであるが--払拭し難く,殊に少しでも疼痛が伴う時はこの不安が増大することは容易に考えられることである。この無疼痛と不安恐怖の除去ということを併せ考えると,無苦痛である全身麻酔の必要性もあるものではなかろうか。
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