症例研究
人工妊娠中絶手術に依る頸管閉鎖及び頸管狹窄の2例に就て
西 潤次郎
1
,
鹿岡 洋子
1
1福島医科大学産科婦人科学教室
pp.270-272
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201028
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緒言
敗戦後の社会状勢を反映して,人工妊娠中絶は優性保護法の適応条件拡大と相俟つて,逐年増加の一途を辿つているが,之と平行して母体の障碍例も数多く報告されるに至つた。従つて其の障碍の種類も実に多種多様であり,之を東北地方部会の調査成績1)及本庄,市村等2)の報告より綜合するに,術後後遺症として
1)子宮穿孔(単純穿孔,網膜牽出,子宮旁組織内出血,腸損傷,胎児腹膜腔脱出。)2)感染(内膜炎,卵管炎,敗血症,骨盤腹膜炎,旁結合織炎,子宮溜膿腫,汎発性腹膜炎。)
3)妊娠障碍(流産,不娠症,習慣流産,)
4)分娩障碍(胎盤癒着,子宮外妊娠,)
5)月経障碍(周期不順,量の増減,月経困難症,無月経,)
6)遺残
7)妊娠継続(中絶不成功)
8)其他身心症,等があるが之等の統計に記載されておらず比較的稀なるものに頸管閉鎖乃至狭窄がある。之に就ては夙にH.Hisgeu3)が報告し本邦でも,大石4),池田5),佐々木6),等の報告があるが,我々も最近人工妊娠中絶手術後11ヵ月に亘り,過少月経及び周期的の下腹痛を訴えた頸管の瘢痕性狭窄と思われる1例と,同じく手術後14ヵ月間無月経で殆んど自覚症状なくホルモン治療をおこなつておつた頸管閉鎖の1例を経験したので此処に報告する。
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