原著
プロゲステロン及びビタミンKによる新生兒溶血性疾患の予防について
飯山 一郎
1
,
安田 幸夫
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.247-249
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201023
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I.緒言
Rh式血液型の発見及びその新生児溶血性疾患の発生に於ける因果関係の開明以来,本症の予防について多くの発表がある。母血清中の抗体を減少せしめる試みとしては,Rh(−)の血液を用い母体の交換輸血を行うことも考えられるが,実用性に乏しく,Uugerは4例に試みたが満足なる効果は得られなかつた。脱感作の目的を以てRh(+)の血液を少量ずつ母体に筋注した事もあるが,無効であるのみならず,却つて感作を強くするおそれがあるので現在は全く顧みられていない。現在有望と思われるのはCarterの所謂Rh-haptenであつて,之は蛋白質を含まずRh抗体と特異的に結合し,しかもそれ自身抗原性をもたず,本症の予防乃至治療に有効であると発表しており,Goldsmithもその効を認めているが,Ha-milton, Ungerは反対している。又強弱2種の抗原を同一固体に投与すると,弱抗原に対する抗体の産生は抑制されるという実験事実に基き,Rh(−)の妊婦に強力抗原たる腸チフスワクチン・百日咳ワクチンを与えてRh抗体の産生を抑制せんとする試みも企てられ,事実Schnaphyはその効を認めているが一般には未だ承認されていない。
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