症例研究
急性白血球減少症に對するシスチン製剤(パニールチン)の効用(第I報)
牧野 甲子二郎
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.886-890
発行日 1953年12月10日
Published Date 1953/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200953
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緒論
惡性腫瘍の療法としては,手術,局所的レントゲン深部治療或はラヂウム等の放射線療法を以つて唯一の手段とされて居たが,此處に新しく細胞毒又は分裂毒に依つて腫瘍細胞のみを發育抑制し之を治療せんとする所謂全身的化學療法劑なるものが出現するに至つた。之等關係化合物に關する同樣の研究が數多く發表される樣になつたが今日迄その基本化合物であるtris或はメチルビス—β—クロールエチルアミン鹽酸鹽即ちナイトロヂエン・マスタード(以下ナ・マという) A及Bとこれ等の中でナ・マ類のN-oxide殊にメチルビス—β—クロールエチルアミン—N—オキサイド鹽酸鹽(ナイトロミン)が現在治療の目的に使用せられている。
一般にナ・マ類の作用は生體内で變化して一種の四級アミンであるエチレンイモニウム型(III)となつて發現するものとせられており,毒性の點はナ・マAよりBが弱くN-oxide鹽酸鹽は約1/10であると云われている。副作用として自覺的に食慾不振,惡心嘔吐,頭痛,全身倦怠が最も多く,手先のしびれ,發熱(39℃に達することあり,のぼせ感等があり,他覺的に注射局所血管の狹窄,皮下出血斑,血尿等あり特に顯著なのは血液に及ぼす影響で著明な白血球減少症を惹起する。總じて青年期以後の婦人にあつては之等の副作用は殊更に顯著な場合が少くなく,小兒はかえつて副作用が少いと云われている。
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