論説
子宮頸癌の新國際分類に對する我々の意見
川中子 止善
1
,
中村 實
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.728-735
発行日 1952年12月10日
Published Date 1952/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200763
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今回發表になつた子宮頸癌の新國際分類法で,一番問題になるのは第0期と第1期である。0期は勿論1期でもその診斷は臨床所見だけでは不充分で,塗抹又は組織標本による組織細胞學的検査を概ね必要とする。然も0期又は1期の如き病變が頸部に限局してる時期に,癌であるか癌でないかを迅速且つ正確に診斷し,治療を加えることが望ましい。
大體癌は正常組織から一足飛びに發生することはあり得ない。即ち正常組織から漸次前癌性又は疑癌の状態に移行し,斯樣な時期を暫く經過し,然る後突如として癌性化するというのが一般の常識である。されば前癌(疑癌)期と癌最初期の間には明に一線が引かれる譯である。此の境界線に立つて前癌と癌を取捨選擇し,敏速に處理する重大な役目を擔うのが婦人科醫である。處が此の境界線に相接する前癌と癌とを區別することは,實際問題として現在迄非常に困難とされている。それは兩者の境界線に相接する最終期前癌性變化と最初期癌性變化とを,明確に識別する組織細胞學的基準乃至目標が誰からも示されず,人によつて各々診斷目標が異る結果,それから生ずる成績の統計は種々雑多で餘り信を置き難い。
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