論説
我國最近の人工妊娠中絶に就いて
古屋 芳雄
1
1國立公衆衛生院
pp.493-494
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200700
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I
最近私は優生保護法第12條及び13條による昭和26年1年間の人工妊娠中絶の實数を手に入れることが出來たが,それは638,350に及んでいる。ここれはこの法の出立した昭和24年に比べて約50萬の増加である。而もこの60數萬の中絶は同法第12條及び13條の規定によつて届出られたものだけであり,この他に無届で實施せられたもの,即ち闇のものが相當ある筈であるが,これは容易につかみにくい。というのはこれを推計する適當な方法が見つからぬからである。しかし私は試みに届出られた數を15才乃至45才迄の婦人々口1000に封する比率であらわして府縣別に配列してみたところ次の如くなつた。(第1表)
以上のヒストグラムに見る如く縣によつて大差がある。ばらばらに折れた櫛の歯のような形を呈している。例えば富山縣は以上の年齢期婦人の51.6‰がこれを行つており,長野縣は39.3‰愛知縣は49.0‰が行つている。然るに奈良縣は僅かに10.8‰,千葉縣は12.3‰しかやつていないことになつている。また中絶數の圖抜けて多い筈の東京都の如き僅かに20.4‰である。かような大きな開きを誰もまじめに受取るものはない。
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