診療室
腟式卵管結紮術と其の遠隔成績
井上 文夫
1
,
瀨尾 芳寬
2
1東京日立病院
2茨城縣多賀病院産婦人科
pp.479-481
発行日 1952年10月10日
Published Date 1952/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200693
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緒言
腟式卵管結紮術は,終戰後,いろいうな理由から,廣く應用されるようになり,その術式の手技や使用器具に關しては,あれが良い,いや,これが良いと,種々取沙汰され,何れも,發表者の方法が,最良であるかの如く,書き立てられているが,要は,術者に,最も手馴れた方法が最も良い譯であるので,筆者等の手技等についての記載は,省略させて頂くこととする。
この手術は,誰が行つても,衆知の如く,漸く2指を通ずるが如き,極く狹い手術野で手さぐりで行うため,梢々もすると,その手技に不充分な點のある事は,想像に難くない。從つて,術者は,その遠隔成績に對しては,他の如何なる手術に於ける場合と同樣,充分責任ある關心を持たなければならない事は,勿論であるにも拘らず,この問題に關する報告は,残念乍ら,見當らない。最近傳え聞く處によると,本術後の妊娠例が,理不盡にも,損害賠償を提訴した實例があるというから,尚更その感を深くし,實地醫家は,充分愼重な態度で望むべきであると考える。この種の報告として,最近,幸い,內川氏の發表(産と婦19巻1號一昭27.)に接するが,同氏の術式は,筆者等のそれとは異り,主として,腹式であり,患者の希望により,膣式を採用しており,又,夫々の例數とか,兩術式の術後經過の比較とか,どの術式に妊娠例が見られたか,又,妊娠例の卵管の再検討とかの記載に缺けているのは,遺憾である。
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