速報
松原反應による子宮腟部癌早期發見例
川中子 止善
1
1川中子醫院
pp.328-329
発行日 1952年7月10日
Published Date 1952/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200652
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本例は40歳,2回經産,約半年前より接觸出血を認む。内診では子宮腟部糜爛以外著變なし。審査切除標本では子宮腟部重層扁平上皮の非定型性増殖と支柱組織の炎症性變化を認めたが,末だ癌と決定する迄に至らなかつた。然るに松原反應は強陽性に現われた。患者の配偶者は外科醫で日頃の經験から松原反應の診斷價値を充分認識して居つた上先輩等の意見も斟酌し,當時婦人科の方では未だ治療方針を決定する迄に充分考えが熟さなかつた際であつたにも不拘,患家の要望に基づき.或る病院で手術した。手術は右側卵巣を残し單純子宮全剔除を行つたが,淋巴腺の腫脹は何處にも見出せなかつた。術後の經過は至極順調で間もなく元の健康を取戻した。
手術後子宮口に接した腟部糜爛面から探取した組織標本検査の結果は前回と略同様で結局炎症による子宮腟部假性糜爛が主なる病變で,俄に癌と斷定は下し難いと云う結論に落着した。こうなると松原反應の陽性が聊か疑問視される羽目に陥りかかつた丁度その折,私は夫君から上述の如き初發徴候發生當初以來からの精しい經過を聞き,又標本も鏡検させて貰つた。
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