綜説
子宮腟部糜爛の成因特にその病理組織的考察
樋口 一成
1
1東京慈恵曾醫科大學
pp.45-48
発行日 1952年2月10日
Published Date 1952/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200579
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婦人科の臨床上,屡々子宮腟部,外口の上唇或いは下唇又は兩唇に亘つて赤色時に暗赤色の稍々光輝のある表面が粗糙な組織の存在が認められる。我々はこれを腟部糜爛(Erosio portionis)或いは簡單にErosionと名付けている。本症の存在は,それが輕微な場合には何等自覚症状を伴わない事もあるが,又所謂帶下の増量を來し,時には接觸時この部から出血して日常生活を不愉快ならしめ,尚これに關連して諸隣接部位の疾患を誘發する場合もあり得る。故に臨床家としては或程度以上の本症の存在を看過すべきではなく,これに對して治療行爲に出るのが當然であると考える。特に注意すべきは,この部が癌腫の好發部位でもあり,且つその初期像と本症との鑑別は,肉眼的には不可能な場合があり,又結核性炎,梅毒性潰瘍の發現部位でもあるので,本症それ自體は,重要疾患とは認め難いとしても,類症鑑別の観貼からその成因を老察するのも強ち意義なしとは考えられないので,此處にその私見を記述してみる。
一般に婦人科關係のみでなく,他科に於ても糜爛と云う名稱は被覆上皮〜重層扁平上皮の缺損を意味している。
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