境界領域 皮膚科から
婦人科と關聯のある皮膚疾患—殊に乳房濕疹並に陰部瘙痒症に就て
安田 利顯
1
1都立駒込病院皮膚科泌尿器科
pp.351-354
発行日 1951年9月10日
Published Date 1951/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200530
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陰部瘙痒症(Pruritus vulvae)なる病名を包括されている疾患の概念は,今日皮膚科學の専門書に於ても必ずしも一樣とは云い難い。之を廣く女子陰部の瘙痒を主徴とするものを總括した名稱とし,或は亦嚴格に皮膚變化を認めず,瘙痒のみを主訴とする状態に對してのみ限定している者もある。元來陰門は他の部分の皮膚に比べて刺戟され易い上に,尚且つ部位的に摩擦,發汗,其の他の刺戟を受け易く,容易に二次的皮膚變化,即ち濕疹乃至皮膚炎樣の,更に1部には苔癬化病變を招き易い。從つて,外因の明らかな陰部皮膚炎,或は濕疹の外は,上記陰部瘙痒なる概念に含まれている廣狹兩義の2つを嚴格に區別することは困難である。然し,本症を只の初發時から觀察し得たものは,何れも陰門皮膚病變を伴わぬ。純粋に瘙痒のみを主徴とする病型の存在を認めている。然し,是れが容易に皮膚變化を續發することも亦明らかで,私共が臨床的に觀察する症例の大部分は,何等かの皮膚病變を有するものと見て差支ない。
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