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第1章 緒言
生れてくる兒が男性であるか女性であるかを母親の胎内に於て豫知したいといふ願望は,人類はじまつて以來絶えず持ち續けられて來た問題であるに違ひない。從て胎性診斷は洋の東西を問はず既に古くから種々の方法によつて試みられて來た。しかし此等の多くはBlakelyの胎性診斷に關する綜説的記述や我國杉浦の著書等に述べてある如く,西洋に於ても東洋に於ても,超自然的方法によつて行はれ,各種の占ひや夢判斷,或は妖術等の如き迷信の範圍を出でないものであつたが,近代醫學の理化學的發達に伴ひ,この分野に於ても數々の理論的竝に實驗的研究が生み出さるゝに至つて,本問題も漸く解決の彼岸に近づきつゝあると云ひ得るやうになつた。
從來試みられた方法のうちで注目すべきものに,卵巣排卵作用に基くSchoenerの多年の所説,allergie性皮膚反應によるKoenigstein,L—ehmann,沈降反應によるAbraham,Petri等の實驗があり,殊に1924年Manoilof一派によつて發表せられた色彩反應による獨特の方法は,當時大いに注目せられたものであり,我國に於ても登倉,栗田の追試がある。男胎兒妊娠の場合に於ける男性「ホルモン」の母體に對する影響による方法としてはDorn及Sugermanの實驗,篠田,山森のこれが追試,吉馴の實驗,平山の赤血球沈降速度による方法から發展した渡邊の方法等が擧げられ,また星合の各方面に於ける文献追試がある。母體の外貌,胎兒の状態,或は妊娠に伴ふ疾病等に對する比較統計學的觀察に基く胎性診斷は既に古くから行はれてゐるが,我國に於ては杉浦の業績があり,また「レ」線撮影に依る方法に山元,松橋の實驗が擧げられる。
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