連載 FOCUS
遺伝性腫瘍における婦人科疾患―HBOC,Lynch症候群を中心に
新井 正美
1
,
古田 玲子
2
,
竹島 信宏
3
1がん研有明病院遺伝子診療部
2がん研究会がん研究所病理部
3がん研有明病院婦人科
pp.147-153
発行日 2014年1月10日
Published Date 2014/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103596
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遺伝性腫瘍と診療上の意義
遺伝性腫瘍とは,遺伝的な素因に基づく癌の易罹患性症候群である.かつては大腸に数千の腺腫が発症する家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis : FAP)のように臨床所見で診断が可能な疾患がもっぱらの対象であった.しかし,1990年代にメンデルの遺伝の法則に従う単一遺伝子性疾患の原因遺伝子が相次いで同定された.この中には,個々の癌を診ただけでは診断できない癌を発症しやすい病態も含まれており,これらの遺伝性腫瘍は原因遺伝子の病的変異を根拠に,1つの疾患単位として独立することになった.現在では,遺伝性腫瘍の診断は主に生殖細胞系列の遺伝子診断(遺伝学的検査)により行われる.
遺伝性腫瘍ではその病態からも推測されるように,通常の各種癌の好発罹患年齢よりも若くして癌が発症する,癌が同時性あるいは異時性に多発したり何回も癌に罹患した血縁者がいる,疾患に特徴的な癌が本人あるいは血縁者に発症する,などの臨床的な特徴を有する.
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