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毎日35℃に及ぶ猛暑が続き,もううんざりといった感じです.病院の中にいれば,エアコンが効いているので快適ですが,一歩外に出ると,まるでサウナに入ったようで,体調を維持するのが大変です.
さて,先日,日本およびアジア・太平洋地域の医学雑誌編集者会議が都内で行われ,出席しました.会議では多くの演題が発表されましたが,その中で最も重要な演題として取り上げられたのが,不正論文についてでした.恥ずかしいことに,こうした話は,常にバルサルタンの臨床研究と,iPS細胞の臨床応用についての発表から始まります.これらの事件は,日本の医学研究に対する信頼を大きく損なうもので,厳しく糾弾し,詳細を明らかにして,二度とこうしたことが起こらないようにしなければなりません.論文不正には,データのねつ造,他の研究者の論文の盗用,二重投稿などが含まれます.研究論文の査読者には,論文の質を精査するだけでなく,こうした不正がないかチェックすることも求められています.データねつ造に対しては,悲しいことですが,不自然にきれいなデータがあったら疑う必要があるかもしれません.論文盗用と二重投稿に対しては,最近コンピュータソフトが開発されていますので,出版社サイドであらかじめチェックしてもらうと査読者は助かります.また,図表の引用元が記載されているか,考察の記載の引用元がきちんと記載されているかのチェックも必要です.二重投稿については,言語が異なってもクロと判定すべきとされており,日本の研究者が日本語で書いた研究論文を英語で書きなおすことは許されなくなっています.不正論文と認定されると,論文の取り下げに止まらず,雑誌によっては研究機関への通報,すべての医学雑誌への投稿禁止処分が科せられることがあり,研究者生命を絶たれることにつながります.今後私たち医学研究者は,公正であることはもちろん,こうした出版ルールをよく勉強する必要があると思っています.
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