今月の臨床 思春期診療グレードアップ
思春期の知っておきたい健康リスク
2.思春期女性のやせ,摂食障害
堀川 玲子
1
1国立成育医療研究センター内分泌代謝科
pp.663-670
発行日 2013年7月10日
Published Date 2013/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103435
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●本邦では小児思春期において,肥満とともにやせが増加し,「普通」が減少している特徴がある.
●摂食障害は低年齢化の傾向がみられる.
●首都圏の小・中学生,高校生の神経性食欲不振症(AN)の有病率はそれぞれ,0.209%,0.674%,0.245%であった.すなわち,中学生では1,000人に7人弱の有病者が存在する.
●有病率では,男子にも有病者は一定頻度認められ,女子では小5からコンスタントに存在し,中2,中3と学年が進むと増加していく.
●二次性徴に伴う体脂肪の沈着は,月経を迎える前後の思春期成長のピークを迎えた頃から起こり始めるが,二次性徴も含めこれら変化に対して子どものみならずネガティブな印象を持つ親が増加している.
●現代では,社会的複雑性と過栄養により,初潮年齢は早まっているが心理・社会的成熟年齢は遅れ,この2つに差が生じている.
●やせ願望へのメディアの影響は大きいが,情報の取捨選択が適切に行えないことも摂食障害の要因である.
●小児期の摂食障害では成長障害,最大骨量獲得の障害,性腺機能成熟障害が認められる.
●比較的短期間に摂食障害発症前の身体状況まで回復すれば,これらの機能・生化学所見などは回復が見込まれるが,長期にわたる障害では回復困難である可能性もあり,結果として成人身長の低下,若年期からの骨粗鬆症を招く可能性がある.
●さらに,脳の成熟にも問題が出る可能性がある.今後発症予防,早期発見・早期治療の体制を確立することが喫緊の課題と考えられる.
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