原著
ジエノゲスト術前投与における子宮内膜ポリープの病理学的変化について
中山 毅
1
,
宮野 奈緒美
1
,
石橋 武蔵
1
,
田中 一範
1
,
原 理恵子
2
,
岡本 明子
2
,
俵 史子
3
,
北山 康彦
4
1JA静岡厚生連静岡厚生病院産婦人科
2JA静岡厚生連静岡厚生病院臨床検査科
3俵IVFクリニック
4日本医科大学武蔵小杉病院病理部
pp.633-638
発行日 2013年6月10日
Published Date 2013/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103426
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要旨
子宮内膜ポリープは,子宮内膜がエストロゲン依存性に過形成を起こした状態である.積極的治療を開始する基準としては,月経異常などの症状,悪性の可能性,そして不妊症で内膜ポリープが1つの要因であると考えられる場合とされる.手術療法として子宮鏡手術が行われることも多いが,最近ジエノゲストの持つ子宮内膜増殖抑制作用,抗炎症作用から,子宮鏡手術の際にジエノゲストを術前投与することが有効であると報告されている.ジエノゲストにより,子宮内膜ポリープの色調が白色化し,ポリープと正常子宮内膜との境界線が明瞭となること,電極による接触出血が低減されることから,臨床的に有用であるとされる.しかしながら病理学的な観点から,ジエノゲストの術前投与の有効性につき,検討した報告はない.そこでジエノゲスト術前投与による子宮内膜ポリープの病理学的変化を検討してみた.
病理学的所見として,通常の子宮内膜ポリープには認めることがない,表面上皮の出血性びらんによる脱落,深部腺管の萎縮,間質細胞の減少や浮腫,リンパ球主体の炎症細胞の浸潤といった特徴的な所見をみた.おそらく表面上皮のびらんはジエノゲスト投与による性器出血と関連し,腺管上皮の萎縮や間質細胞の減少や浮腫といった所見が,子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術における白色化や接触出血の低減と関連していると推測された.これらの特徴的な病理組織学的所見が,ジエノゲスト術前投与の有効性と関連があると推測している.
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