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編集後記
岡井 崇
pp.1158
発行日 2012年11月10日
Published Date 2012/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103210
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<共著者>
山中博士のノーベル医学・生理学賞の受賞は日本人の心を沸き立たせる朗報であった.3年前から期待を寄せていた私は,テレビ報道を目にした瞬間,喜びのあまり手を叩き小躍りしたことを記憶している.それにしても,翌日の読売新聞の記事には驚いた.正直,真実とは思えなかったので,後日の新聞各紙の疑惑報道には納得の感があった.しかし,その後の追及が,M氏が虚偽の発表をした論文の共著者にまで及ぶに至って,ある危惧が頭を過り,私は反論したくなった.
現在,論文投稿に際し,多くの一流雑誌は共著者に自署することを要求する.勿論,当該者が研究或いは論文作成に関与したことと,論文内容に著者のひとりとして責任を持つことの証左としてである.が,しかし,共著者が論文内容を厳密に確認しているかと問われると,イエスと答えられない場合のあることは読者諸兄姉もご存じであろう.私が心配したのは,今回の論文捏造事件を契機として文科省や日本医学会などが共著者の資格に強い縛りを設けかねないことである.教室員の研究データのひとつひとつまでチェックできない教授の名前は論文から消え去ることになる.それはそれですっきりするだろうが,この種のルーズさを一切排除することの副作用も充分検討してからにしてもらいたい…….
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