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卵巣癌は早期診断が困難であり,腹膜播種をすでに形成した進行癌で診断されることが多い.白金製剤やタキサン系薬剤の登場以来,5年生存率の向上をみてきたが,先の臨床背景から長期生存率は依然として不良である1, 2).初回治療が奏効し寛解が得られた場合でも,その多くは再発をきたし,上記の化学療法に加え種々の集学的治療をもってしても治療成績の向上はみられていない3, 4).その克服には,がん細胞の無秩序な増殖にかかわるシグナル伝達,血管新生や浸潤にかかわる分子機構5),腹膜播種および転移臓器における微小環境因子の解明,さらには最近注目されているがん幹細胞についての理解がきわめて重要な役割を担っている.
近年,がん治療の領域において,がん細胞の特性を規定する分子機構が明らかにされるに伴い,それらの機構に関与する分子標的を明確にし,その機能を特異的に制御する分子標的治療が,抗悪性腫瘍薬開発において中心的な役割を果たすようになってきた6, 7).事実,多くの悪性腫瘍において新たな分子標的薬が続々と臨床に導入されその有効性が示されているが8),卵巣癌に対する分子標的薬はいまだ承認取得には至っていない.その中で,American Society of Clinical Oncology(ASCO)2010において,再発卵巣癌に対するさまざまな新規抗悪性腫瘍薬の臨床試験の結果が報告されたが,その大部分は分子標的薬を用いた検討であった.卵巣癌の再発症例,特に従来の抗がん剤治療に抵抗性の腫瘍において,分子標的薬への期待が今後さらに高まっていくことが予想される.このことから,新規分子標的薬の開発は現在の卵巣癌治療に課せられた焦眉の命題である.
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