今月の臨床 婦人科内分泌療法─病態の理解と正しい診断に基づく対処・治療のポイント
月経異常
9.月経前症候群(Premenstrual syndrome : PMS)
白土 なほ子
1
,
長塚 正晃
1
,
岡井 崇
1
1昭和大学医学部産婦人科教室
pp.418-427
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102627
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1 概 念
1931年にFrankら1)が月経前に発症する多岐にわたる精神的,身体的症状を月経前緊張症(premenstrual tension : PMT)と称し報告し,1953年Greeneら2)がそれを月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)と呼んで以来,その病態・治療などについては種々の研究が進められてきた.1990年にはMortolaら3)がPMSの診断基準案(表1)を報告している.一方,アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル第4版(DSM─IV)(表2)4)はPMSの重症型として月経前気分不快障害(premenstrual dysphoric disorder : PMDD)を研究用基準案として発表している.
日本産科婦人科学会用語解説集5)では,PMSは「月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で,月経発来とともに減退ないし消失するもの」と示されており,近年症例報告も多くなされるようになった.対象症例の症状の消退については「月経発来とともに減退する」症例を含み,厳密には日産婦の定義「月経発来とともに消失するもの」よりもAmerican college of obstetricians and gynecologists(ACOG)practice bulletinのPMSの診断基準6)を用いていることが多い.ACOGのPMS診断基準はMortolaらの診断基準から作成されているが,この部分はMortolaの診断基準5の下記部分が除かれたものである.
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