今月の臨床 静脈血栓塞栓症─予防・診断・治療
遺伝性の凝固異常と静脈血栓塞栓症
根木 玲子
1
,
宮田 敏行
2
1国立循環器病研究センター周産期・婦人科
2国立循環器病研究センター研究所病因部
pp.166-169
発行日 2011年2月10日
Published Date 2011/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102571
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はじめに
妊娠中の静脈血栓塞栓症と遺伝的素因(先天性血栓性素因)については,欧米では多くの報告がなされている.また,凝固関連の遺伝子異常と,静脈血栓塞栓症との関連性が詳しく検討され,抗凝固療法による予防が,ガイドライン化されている.特に,Factor V Leiden変異1~3)は,欧米人の1~15%に認められる最も頻度の高い遺伝子変異であり,変異キャリア妊婦に対する予防が広く行われている.
一方,わが国においては,凝固関連遺伝子をもとにした,妊産婦のテーラーメード医療は行われていない.
また一般に,静脈血栓症の先天性血栓性素因として,アンチトロンビン,プロテインC,プロテインSの先天性欠損症が知られているが,これらに加え,白人種ではFactor V Leiden変異,プロトロンビンG20210A変異が血栓性素因として明らかになっている.しかし,両変異は日本人には報告されておらず,欧米とは異なる背景が存在すると考えられる.そこで,日本人の静脈血栓塞栓症と先天性血栓性素因を中心に紹介したい.
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