今月の臨床 静脈血栓塞栓症─予防・診断・治療
抗リン脂質抗体症候群と静脈血栓塞栓症
杉 俊隆
1
1杉ウイメンズクリニック不育症研究所
pp.161-165
発行日 2011年2月10日
Published Date 2011/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102570
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Thrombophilia(血栓症素因)と妊娠
正常妊娠中は,血液凝固系が亢進することが知られている.その理由としては,フィブリノーゲン,第VII,VIII,IX,X因子,von-Willebrand factorの血漿レベルの増加,機能的に活性化プロテインCに対する抵抗性が増すこと,プロテインSが減少すること,PAI─1やPAI─2の増加,tPAの減少,血小板活性化などが挙げられる.よって,妊娠中の静脈血栓症のリスクは,非妊時より6倍高いといわれている.したがって,血栓症素因を背景にもつ患者の場合,非妊時に無症状であっても,妊娠するとさまざまな血液凝固系異常に起因するトラブルを発症し得る.これらの血栓傾向は,分娩時がピークであり,一般的に分娩後3週間で凝固,線溶系は正常化する.
抗リン脂質抗体症候群に関連する合併症には,静脈血栓,動脈血栓,反復流産,妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剥離,子宮内胎児発育遅延(intrauterine growth restriction : IUGR),子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death : IUFD)が代表的である.静脈血栓は,下肢の深部静脈血栓が最も多く,その他網膜,腎,肝静脈などがある.動脈血栓は静脈血栓より頻度が低い.脳血栓,末梢動脈血栓,狭心症および心筋梗塞が報告されている.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.