今月の臨床 異所性妊娠
臨床像の変遷―最近の傾向
増﨑 英明
1
1長崎大学医学部産婦人科
pp.1060-1065
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102420
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はじめに
日本産科婦人科学会雑誌2009年3月号に,「ectopic pregnancy子宮外妊娠の日本語訳について」という委員会提案が掲載されている.そこには東西の多くの教科書から本症の用語に関する定義や疑義や意見が収集されており,欧米において「ectopic(異所性)」と「extrauterine(子宮外)」とが区別なく使用されていた時代から,疾患概念が明らかになるにつれ,ectopic pregnancyの用語が定着していった現在までの経緯を述べ,今のわが国においても学術用語としての「子宮外妊娠」を「異所性妊娠」に変更する必要があると解説している.すなわち「間質部妊娠」および「頸管妊娠」については着床部位が子宮内(正所性)でも子宮外でもなく,むしろ異所性と表現すべきであって「子宮外妊娠」なる用語が不適切であると結論している(図1)1).
本提案は会員の意見を求めたうえで,日本産科婦人科学会の統一見解として承認されたが,これらの議論のなかにも,「異所性妊娠」という疾患の時代とともに変化してきた臨床像が見え隠れしている.以前は大量出血のためショック状態で搬送されていた本症が,主に画像診断や内分泌学的精査によって早期診断され,着床部位についても同定できる例が増えたことから生じた議論であるともいえる.ここでは異所性妊娠の最近の臨床像の変化について解説する.
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