今月の臨床 着床障害―生殖医療のブラックボックス
着床障害への対処法
4.習慣流産,着床障害への着床前診断
大谷 徹郎
1
1大谷産婦人科
pp.868-871
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102389
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はじめに
着床前診断は体外受精で生じた受精卵が8分割~胚盤胞に育った段階で,一部の細胞を生検し,その細胞について,受精卵が着床する前,すなわち妊娠が成立する前に染色体や遺伝子の異常の有無を調べる技術である.当初は遺伝子疾患の回避を目的として開発され,1990年に最初の出産例がHandysideら1)により報告されている.妊娠成立後に実施される絨毛検査や羊水検査などの出生前診断に比べて,検査結果が意に沿わないものであった場合の人工妊娠中絶の可能性を回避できるというメリットがある.
しかし,その後,着床前診断によって,染色体転座を原因とする習慣流産患者の流産を予防することができることが明らかになった.さらに,体外受精反復不成功例において,着床前診断によって受精卵の染色体の異数性を検査することが,不成功の原因の検索ならびに予後の推測に有効ではないかとする報告が増えている2).
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