今月の臨床 子宮頸がんの予防戦略―ワクチンと検診
HPVワクチン─確実な予防効果
4.子宮頸がん予防HPVワクチンの医療経済
今野 良
1
1自治医科大学附属さいたま医療センター産科婦人科
pp.257-267
発行日 2010年3月10日
Published Date 2010/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102290
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はじめに
新規の医療技術導入は,公衆衛生の観点から必須である.しかし,新規の技術が導入されることで保健医療の現場では質の向上が期待されるものの,新規の技術は従来の技術に比べて高価な場合が多く,政策決定者の立場からは必ずしも無条件に採択されるものではない.公衆衛生上,ワクチンや検診といった予防医療を導入することで無駄な医療費支出を抑え,さらに疾病発生による労働損失も抑え,間接的には社会保障費の歳入減を抑えることが期待されている1, 2).子宮頸がんによる直接費用は最低に見積もっても年間約30億円と推計され3),そのほかに検診に要する費用や間接費用も含めると医療財政に大きな負担を与えていることが窺える.このような現状や今後患者数が増えると推計されていることを踏まえると,ワクチンの医療経済評価は,新規ワクチンに公的な医療財源から資源配分するかどうか意思決定をするために重要な判断材料となる.しかし,これまで子宮頸がん予防を目的としたワクチンの経済評価は,日本においてはなかった.本稿では,基礎的な用語の解説を含めて,子宮頸がん予防HPV(human papillomavirus)ワクチン(以下,HPVワクチン)の医療経済について概説する.
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