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はじめに
今,再生医療は,幹細胞学および再生医学の発展に連動して,国家的プロジェクトとして,内外で着々と実現化に向かっている.その基本戦略は,出発となる細胞を同系譜あるいは異なる系列の細胞へ分化誘導し,最終的に目的の組織や器官をその機能も含めて再建することである.この際に,出発材料となる主な細胞源は,幹細胞(stem cell)となる.
幹細胞は,1)未分化性,2)複数の系統の細胞に分化しうる能力,3)自己複製・自己再生する能力,といった特性を有する細胞と定義される.胚盤胞の内細胞塊由来である胚性幹細胞(embryonic stem cells : ESC)は,理論上ほぼあらゆる細胞へ分化するポテンシャルとほぼ無限の増殖能力を有する点で,幹細胞の代表と位置付けられる.近年,成体細胞に4つの因子(Oct3/4,Sox2,Klf4,cMyc)を導入することにより,ES細胞様のポテンシャルを有する細胞を作製することが可能となり1, 2),人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells : iPSC)として,基礎生命科学および臨床医学の双方に大きなインパクトを与えている.一方,人工的に作られる上記のESCやiPSCと異なり,生体内で自然に存在する幹細胞として,完成した個体(成体)由来である成体幹細胞(adult stem cells,tissue-specific stem cells)がある.
その他の幹細胞として,臍帯血幹細胞や核移植胚性幹細胞などがあるが,これらは上記に挙げた幹細胞の亜型と位置付けられる.本稿では,ESC,iPSC,および成体幹細胞に関する研究の現状について簡単に触れたのち,生殖医療・不妊治療の観点から,生殖幹細胞や雌性生殖器官由来幹細胞の研究の現状と今後の展望について概説する.
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