産婦人科医療--明日への展開 生殖のコントロール--不妊治療への展望
不妊治療への新しい展望
東條 伸平
1
,
野田 洋一
1
Shinpei Tojo
1
1京都大学医学部婦人科学産科学教室
pp.15-18
発行日 1983年1月10日
Published Date 1983/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206740
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昭和31年,日本不妊学会の発足以来,既に4分の1世紀が経過した。その間に生殖の生理及び病理に関する幾多の知見が集積されてきており,同様に,科学技術の進歩にも助けられて不妊治療や検査における進歩にも目を見張るものがある。無排卵症治療におけるゴナドトロピン療法の導入1),クロミッド等排卵誘発剤の開発2),子宮鏡3)や超音波断層法の導入4)及び不妊に関与する免疫学的因子の評価5)やヒト体外受精法の開発6)等,その内容は多岐に渡っている。
しかし,実際の不妊治療を担当する医師にとって,不妊治療はある意味で今尚むつかしいものである。その理由は個々の不妊夫婦に関してその原因が何であるかを適確につかむ事がむつかしい事にあると思われる。これは一つには,不妊の原因が数多くの因子に由来する可能性のあること,もう一つには,それぞれの不妊の因子に対して,これを生物学的機能という面から客観的に評価しうる検査法が不十分である為と考えられる。妊娠の成立が雌性及び雄性の生殖細胞の合一と,これにつづく初期胚への発展及び着床という連続した一連の現象の帰結と考えられる以上,不妊原因検索は当然の事ながら,これら生殖現象のどのステップに障害があるかという事の評価に帰結することになる。
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