今月の臨床 HRTの新ガイドラインを読み解く
【HRTの適応】
5.動脈硬化
大道 正英
1
,
田辺 晃子
1
,
笠松 真弓
1
,
井川 佳世恵
1
,
藤城 奈央
1
,
立川 奈央
1
,
西尾 桂奈
1
,
丸岡 理紗
1
1大阪医科大学産婦人科学教室
pp.828-835
発行日 2009年6月10日
Published Date 2009/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102118
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はじめに
閉経前は心・血管疾患の発症は男性の約3分の1であるが,閉経後心・血管疾患の発症が次第に増加していく疫学研究より,女性ホルモンに心・血管疾患予防作用のあることは明らかである(図1)1).しかしながら,心・血管疾患への一次予防を目的とした前方視的大規模無作為臨床試験であるWomen's Health Initiative(WHI)の結果により,ホルモン補充療法が転機を迎えた.HRTは大腿骨頸部骨折の発症を減少することが確かめられたが,冠動脈疾患・脳梗塞,乳癌,肺塞栓症のリスクを上げることも明らかになった2).この結果より,FDAでは,ホルモン補充療法は更年期症状の治療目的のみ利用されるべきで,心・血管疾患の予防目的で行うべきではないと勧告した.しかしながら,ERTでは脳梗塞のリスクは上がるものの,冠動脈疾患,乳癌,肺塞栓症のリスクは上がらなかった3).また,種々のWHIのサブ解析の結果も出た.
この章では,まずエストロゲンの血管への作用を説明し,動脈硬化におけるホルモン補充療法の位置付けを,ガイドラインの内容も加えながら解説する.
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