今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 B手術療法
【腹腔鏡下手術】
57.チョコレート嚢胞がある不妊症例に対する核出術は,癌化を考慮し,積極的に行うべきでしょうか.最新の知見を教えてください.
舩渡 孝郎
1
1日生病院産婦人科
pp.511-513
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102046
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[1]はじめに
チョコレート嚢胞が妊孕能低下の原因になるか否かはまだ議論の多いところであるが,卵管周囲・采の癒着が不妊症の原因になることは明らかである.また,過去においては,閉経期を迎えたら積極的な治療は必要ないと思われてきた.しかしながら,近年卵巣癌における病理学的検討では,卵巣類内膜癌や卵巣明細胞腺癌において子宮内膜症が高率に合併していることから関連が調査され,小林1)の静岡県内の疫学調査において嚢腫の存在が超音波で確認された臨床的チョコレート嚢胞の0.72%に卵巣癌が発見された.50歳以上のチョコレー嚢胞の2.14%に卵巣癌が合併していたことにより,治療法が変わってきた.また,嚢腫の大きさと癌化との関係が着目され,40mmを超えるチョコレート嚢胞では癌化が認められ,100mmを超えるとその頻度は増大した(表1).年齢別では40歳以降の癌化率が高く,更年期以降のチョコレート嚢胞の取り扱いに慎重にならなければならない(表2).すなわち,癌化を考慮するのなら挙児希望がない40歳以上のチョコレート嚢胞はサイズによらずoophrectomyするのが望ましい2)との意見もある.
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