今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
I 不妊の検査・診断 A排卵因子
【染色体検査】
6.排卵障害にかかわる染色体異常,特に早発閉経における異常の特徴と検出率について教えてください.
清水 良彦
1
,
髙橋 健太郎
2
1滋賀医科大学産科学婦人科学講座
2滋賀医科大学地域医療システム学講座
pp.341-343
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101995
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[1]はじめに
染色体異常を伴う卵巣性排卵障害は,原発性と続発性に分けられ,原発性はTurner症候群とpure gonadal dysgenesis,続発性はpremature ovarian failure(早発閉経)が代表である.早発閉経は40歳未満の高ゴナドトロピン(血中FSH値が40mIU/ml以上)性無月経と定義されている.自然早発閉経の頻度は約1%と推定されており1),本邦におけるデータでも,40歳未満で自然閉経した女性は0.54%と報告されている2).早発閉経の「failure」という語源は卵巣機能が正常ではないが必ずしも完全な卵巣機能の停止を意味するものではなく,早発閉経は間歇的なエストロゲンの産生や排卵が認められ,5~10%は妊娠・分娩の可能性がある3).
早発閉経の病因と関連性があると考えられる染色体異常の検討から,石原4)は早発閉経患者の染色体異常の頻度は本邦では16%であったとし,そのすべてがX染色体上に認められ,X染色体の欠失,すなわちpairing failureの程度と発症年齢には反比例の傾向が認められたと報告している.また,正常核型の早発閉経症例でも家族歴の聴取ではそのうち18.2%で母親が早発閉経であったと報告4)しており,早発閉経は優性形質として受け継がれる遺伝性を有していると考えられる.
早発閉経患者の遺伝子異常は多数報告5)されており,常染色体,X染色体のいずれにも存在する.本稿では特に重要でトピックである早発閉経関連遺伝子について解説する.
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