今月の臨床 婦人科がん化学療法up to date
卵巣癌
3. 組織型を考慮した薬剤選択の必要性とその有効性
上田 豊
1
,
榎本 隆之
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(産科学婦人科学)
pp.728-731
発行日 2008年5月10日
Published Date 2008/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101772
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はじめに
卵巣癌は子宮頸癌や子宮内膜癌とは異なり,腹腔内に播種したIII期以上の進行癌として発見されることが多く,ほとんどの症例で外科的治療に加えて抗癌剤を用いた化学療法が必要となる.現在卵巣癌に対する標準的化学療法は,欧米で行われた大規模試験の結果からタキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法とされているが,進行卵巣癌の半数以上が治療中もしくは治療後に再発し,卵巣癌の根治を困難にしている.
さて,卵巣癌は組織型が多様であることが知られており(図1),FIGOの統計によれば漿液性腺癌が約55%,類内膜腺癌が約15%,粘液性腺癌が約13%,明細胞腺癌が約6%である(FIGO annual report 1998).日本人では漿液性腺癌の占める割合が欧米人に比して低く,全体の約40%,一方,明細胞腺癌が約20%とその頻度が欧米人に比し3~4倍高い(日本産科婦人科学会卵巣がん患者年報 2002).従来卵巣癌に対してはプラチナ製剤がkey drugとして使用されてきたが,明細胞腺癌はプラチナ製剤に対して抵抗性であり,予後も不良とされる1, 2).しかし,欧米では卵巣癌の多くが漿液性腺癌であり,明細胞腺癌は数%にすぎないため,卵巣癌に対する標準的化学療法とされるタキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法の組織型別の効果の検討はなされてこなかった.
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