今月の臨床 婦人科がん化学療法up to date
婦人科がん化学療法の将来展望
紀川 純三
1,2
,
島田 宗昭
1,2
,
板持 広明
1,2
1鳥取大学医学部がんセンター
2鳥取大学医学部産科婦人科
pp.666-669
発行日 2008年5月10日
Published Date 2008/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101761
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はじめに
婦人科がんに対する治療に関しては,2004年に卵巣癌,2006年に体癌,2007年には頸癌治療ガイドラインおよび卵巣癌治療ガイドライン改訂版が発刊され,治療の標準化に大きな役割を果たしている.治療ガイドラインでは,化学療法は婦人科がんに対する有力な治療法の1つとなっている.しかしながら,各癌腫や組織型別の至適レジメンは確立されていない現状にあり,さまざまな臨床試験が行われている.また,分子生物学の進歩に伴い,癌の増殖,浸潤・進展や転移の機序の一端が明らかとなり,癌の生物学的特性に関連した遺伝子や蛋白を標的とした分子標的治療薬が開発されてきた(表1).分子標的治療薬は従来のcytotoxic drug(細胞毒性薬)に対してcytostatic drug(細胞静止薬)といわれ,幅広い癌腫での抗腫瘍効果ではなく,特定の癌に確実に効果がある.現在,婦人科がんに対する分子標的治療薬の効果について検証がなされている.
最近のゲノム解析の進展やマイクロアレイなどの開発により遺伝子発現のプロファイリングが比較的容易に行えるようになった.化学療法耐性に関与する遺伝子解析を用いた至適抗癌剤の選択による治療の個別化,さらには分子標的治療薬の開発,遺伝子治療の発展が期待される.
本稿では,分子標的治療薬を含めて最近の婦人科がん化学療法の動向と将来への展望について概説する.
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