今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
II 不妊治療
【一般不妊治療】
8.配偶者間人工授精の妊娠率改善,安全性向上のための工夫は?
吉田 丈児
1
,
兼子 智
1
,
高松 潔
1
1東京歯科大学市川総合病院産婦人科
pp.483-487
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101731
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1 はじめに
医学的生殖介助(ART)は広義には配偶子の形成,受精,着床,妊娠維持を医学的に補助して不妊治療を行うことであるが,実際には子宮腔内人工授精(IUI),体外受精・胚移植(IVF-ET),さらには顕微授精(ICSI)に至る人工的な授精による不妊治療を指す場合が多い.腟に射精された精液は子宮頸管,子宮腔内,卵管と雌性生殖路を遡上する過程でその数を減じ,最終的に受精の場である卵管膨大部に到達するのは50匹程度と考えられている.精液所見の悪化は受精の場に到達する精子数の減少であり,ARTは2つの方向を目指している.1つは雌性生殖路における精子遡上過程をバイパスして精子を卵のより近くに送り届け,できるだけ少ない精子数で受精を可能とするものである.IUIは精子の雌性生殖路移動の過程で最も高い障壁である頸管をバイパスする.もう1つは射精精液を選別,濃縮してできるだけ多くの精子を媒精に供し,より精子数を必要とする授精法の選択を可能としようとする試みである.授精法の高度化は媒精に供する精子数を減じたが,雌性生殖路で行われる精子の質的選別,生理的変化をin vitroで代行する必要を生じた.
本稿ではIUIの妊娠率改善,安全性向上を考察する.IUIは低コスト,低侵襲であり,現状ではIVF施行の前段階としてコースメニューとして行う場合が多い.このため,患者背景,IUIの適応などを十分考慮せずに行う例も多く,妊娠率低下の一因となっている.IUIも妊娠率を論じるに際しては,適応(患者選択),過排卵誘発法,精子調製,授精法などを考慮(標準化)する必要がある.
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