今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
I 周産期管理
【分娩・産褥管理】
5.産褥期深部静脈血栓症の予防対策は?
小林 隆夫
1
1県西部浜松医療センター
pp.428-433
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101722
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 はじめに
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)はこれまでわが国では比較的稀であるとされていたが,生活習慣の欧米化などに伴い近年急速に増加している1~3).血栓症で臨床的に問題となるのは,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)とそれに起因する肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)である.PTEはDVTの一部(5~10%)に発症する疾患であるが,一度発症するとその症状は重篤であり致命的となるので,急速な対処が必要となる.妊娠中は以下の理由で,VTEが生じやすくなっている.すなわち,(1)血液凝固能亢進,線溶能低下,血小板活性化,プロテインS(PS)活性低下,(2)女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用,(3)増大した妊娠子宮による腸骨静脈・下大静脈の圧迫,(4)帝王切開などの手術操作による総腸骨静脈領域の血管(特に内皮)障害および術後の臥床による血液うっ滞,などである.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.