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はじめに
近年,著しいARTの進歩・普及・安全性の確立がなされ,出生児の1.5%以上がARTによる妊娠であるという時代を迎えており,深刻な不妊症患者にとっては非常に大きな福音となっているが,それと同時に大きな問題となっているのが多胎妊娠であり,このことは母児に対するリスクが大きく社会的にも影響が大きいため,今日の周産期医療の崩壊に拍車をかけているといっても過言ではない.妊娠率の向上を第一義に進歩してきたARTも,現在では母児の安全確保を目指して,妊娠率の向上と同時に単胎妊娠を目標とすることに主眼が置かれている.しかしながら,患者のさまざまな背景や治療経過によっては排卵誘発剤を併用したAIHやIVF後に複数胚の移植を行わざるをえない状況も多々存在する.妊娠率を低下させずに単胎妊娠を実施することができれば理想的であり,当然われわれはその目標に向かって絶えず努力しなければならないが,一定の割合で発生する多胎妊娠は避けられないのが現状と考えられる.
ところが一般的な不妊症患者においては,多胎妊娠に伴う大きなリスクが正しく認識されていることはむしろ少なく,逆に多胎妊娠でも問題ないと考えるどころか,むしろ双子を希望しているような患者に出会うことも少なくない.そういった患者にそのリスクを説明し納得していただくことはなかなか困難な作業ではあるが,われわれARTに携わる者は必ず行わなければならないきわめて重要なインフォームド・コンセント(informed consent:IC)である.可能であれば数字や図表を取り入れたわかりやすい説明書を用意し,多胎リスクについても記載された同意書を取ることがこれからの時代は必要となると考えられる.本稿では,不妊治療患者に対する多胎妊娠・出産リスクについてのICについて述べていきたい.
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