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1 診療の概説
放射線治療に伴う障害は,治療開始とともに始まり治療中から終了後3~6か月以内にみられる早期障害と,半年以上経過して生じる晩発障害とに分類される 1, 2).子宮頸癌をはじめとする婦人科癌に対する放射線治療では骨盤内臓器への影響は避けがたく,消化管障害もその副作用の1つとして現れる.放射線治療の下部消化管への早期障害は照射線量が20~30 Gyに達すると生じるとされ 3),放射線治療により生じる炎症と腸管の蠕動運動の亢進により,下部消化管における吸収障害が顕在化する4).通常,水溶性下痢は治療開始後2~3週間で出現し 1, 4),治療終了後1週間~10日で回復する 4).放射線の影響を受ける消化管部位により症状は異なり,小腸への障害では水様性の下痢が,直腸へ影響が及ぶ場合は粘液便・血便がみられる 4).
下痢症状は放射線治療全体からみた場合,婦人科の子宮頸癌治療患者に最も多くみられるものであり,1/5の患者に早期および晩発の下痢症状がみられ,その約半数に加療が必要であったとの報告がある 4).放射線照射が消化管に与える影響に関して,総照射線量のみならず,1回の分割線量および照射される腸管の体積によって,消化管障害の程度が規定されることが報告されている 5).子宮頸癌1,456症例における検討では,総照射線量が60 Gyを超える場合,50 Gy照射の場合と比較して小腸におけるGrade3の障害発生率が有意に上昇することが報告されている 6).また,従来高率に消化管障害を招いていた大動脈リンパ節への照射については,照射線量を50 Gyまでに抑えることが副作用軽減のために勧められており 3),さらに腹膜外より傍大動脈のリンパ節郭清を行い腹腔内の術後癒着を避けることによって,腸管の閉塞なども含めた放射線治療における消化管障害が軽減されるとの報告がある 7).
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