今月の臨床 妊娠中の偶発症候─産科医のプライマリケア
妊娠中の偶発合併症―診断と管理の基本
水上 尚典
1
1北海道大学医学部産婦人科
pp.1258-1261
発行日 2006年10月10日
Published Date 2006/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101287
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はじめに
妊娠中の偶発合併症は生殖可能年齢婦人に起こりうる疾患の数とほぼ同数,またヒトに起こりうるすべての事故の種類数だけあり概説することは困難である.妊娠中の偶発合併症の診断・治療に際して注意しなくてはならないことは以下の通りである.
(1)血液検査所見は非妊時の正常範囲を当てはめることができないものがある.当該妊婦の妊娠週数の正常範囲を考慮する必要がある.
(2)子宮の増大により腹部臓器の解剖的位置関係に変化が生じている可能性がある.
(3)非妊時に比して感染しやすくなっている可能性がある.
(4)非妊時に比してhypovolemiaに気づかれにくい可能性がある.
(5)母と児の命,二者択一の場合は母体生命を優先する.
(6)薬剤による治療時には児への影響を考慮する.
(7)外科手術の際は児への影響を考慮して適切な時期を模索する.
(8)合併症によっては早期の児娩出を考慮する.
(9)腹部打撲の可能性がある外傷においては胎盤早期剥離が数時間後に起こってくる可能性があるので,受傷後数時間のCTGモニターが望ましい.
本稿では,妊娠中に発見された偶発合併症により手術が必要となった場合の影響,妊娠中の外傷の影響,妊婦交通事故後の注意についてのみ記載する.
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