臨床メモ
妊娠中の合併症管理の進歩
竹内 久彌
1
1順天堂大学産婦人科
pp.222
発行日 1976年3月10日
Published Date 1976/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205389
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最近では,すでに何らかの疾患を有する婦人が強く挙児を希望するようになり,また,妊娠時の偶発合併症の管理の際にも可能な限り妊娠を継続するための努力が払われるようになつた。今回はこのような意味での症例報告を2編紹介する。
最初の報告は,ロンドン病院のAckrillら(Brit.Med.J.2,172,1975)の扱つた腎透析中の婦人の妊娠,分娩成功例である。膀胱尿管逆流と細菌尿を併う両側腎の瘢痕化による腎不全と高血圧のため,この婦人には週3回の規則的腎透析が続けられていた。透析開始後20週目に妊娠16週であることが判明し,栄養を補償しながら血中尿素の上昇を防ぎつつ,血圧と電解質バランスのコントロールに努力が注がれた。透析を週5回に増し,随時透析や赤血球輸血を追加していたが,妊娠31週からは早産徴候が起こり,結局,自然陣痛の発来により1530gの男児を骨盤位で分娩した。分娩後の母体の回復は順調で,児はICUに収容して7週後には3700gの体重で退院している。腎透析中の妊娠分娩例はこれが最初のものではないが,このような妊娠を周産期まで維持し,母児の将来を保証できるようになつたことは有難いことである。
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