今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方
VI. その他
[術後の肥厚性瘢痕]
100.肥厚性瘢痕ができやすい体質です.術後の適切な予防法について教えて下さい.また,予防にもかかわらず高度な肥厚性瘢痕が認められた場合はどうすればよいでしょうか.
金岡 靖
1
,
市村 友季
1
,
石河 修
1
1大阪市立大学医学部産婦人科
pp.628-629
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101041
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1 診療の概説
肥厚性瘢痕の予防と治療について最も必要な資源は医師と患者双方の根気と熱意である.肥厚性瘢痕ができやすい体質とあらかじめ判明していれば,術後時間をおかず形成テープで固定するなどの予防的処置とトラニラストの内服を開始しておくことが適当であろう.長期間の治療を要しないような皮膚切開位置と方向を選択し,瘢痕形成を最小限にとどめるために真皮縫合を行っておくことは予防の前提である.
術後瘢痕は程度はともかく不可避に発生するが,肥厚性瘢痕とケロイドを明確に区別して取り扱う必要がある.肥厚性瘢痕とケロイドは発生初期には鑑別が困難である.しかし,ケロイドは手術創だけでなく,炎症後,外傷後,あるいは虫さされなどの微小な傷跡などにも発生し,周囲の健常組織に進行性に浸潤・拡大する性格が特徴である.ケロイドは,肥厚性瘢痕から移行するのではなく,はじめからケロイドとして発生するといわれている.また,ケロイドは治療に抵抗するのに対し,肥厚性瘢痕は治療によく反応する.しかし,ケロイドには病因論的にも不明な点が多く残されており,肥厚性瘢痕とは病理組織学的に明確に鑑別することはできないという意見も多い.治療に反応して一定期間に改善を示すものが肥厚性瘢痕であり,難治性で増悪するものがケロイドであるという区別も実際的である.
保存的治療に反応しないケロイドに対する外科的治療は一般論としては禁忌である.
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