- 有料閲覧
- 文献概要
1 診療の概説
上皮性悪性腫瘍(卵巣癌)については,腫瘍マーカーとして一般にCA125,CA19―9,CA72―3,CEAが用いられる.上記のマーカーはいずれも術前に悪性であることを診断する意味では特異性が高いとはいえないが,術後の治療効果判定や再発の指標としての有用性が報告されており,なかでもCA125が最も有用であることが報告されている.また,従来のWHOの抗腫瘍効果判定基準に代わるものとして注目されているRECIST(response evaluation criteria in solid tumors)の規約においても,判定基準の1つとしてCA125の減衰度による評価基準の採用が検討されている1)(表1).
CA125はモノクローナル抗体OC125により認識されるムチン性のエピトープで,腹膜や胸膜などの体腔上皮に局在する抗原であり,CA125の上昇は婦人科癌のみならず,消化器癌や肺癌においてもみられ,軽度の上昇は肝疾患にも認められる2).また,婦人科腫瘍におけるCA125の上昇は良性腫瘍で30%,悪性上皮性腫瘍では術前の85%の症例に認められ,I期の卵巣癌の50%,II~IV期の90%の症例で上昇が認められる3).
またCA125の値は腫瘍体積を反映し,術後の値は単独で予後決定因子となる4, 5).抗癌剤治療後のCA125値の推移をRustinの基準に準拠して評価した場合,測定可能病変に基づく効果判定とよく相関することが示されている6).卵巣癌の術後症例において,臨床的に再発が確認できる数か月前よりCA125が次第に上昇しているという報告は数多く6~8),CA125が正常上限を超えてから臨床的再発確認までの平均期間は135日7)であり,正常上限値の2倍を超えてから63日8)とされている.このことからCA125の測定は最低3か月ごとに行うべきである.もしCA125が高値を示した場合,測定誤差を考慮して必ず2回以上の計測を行い,いずれも正常上限の2倍を超えて上昇していることを確認する.2回以上の計測値がいずれも正常上限の2倍を超えている場合,臨床的に再発している可能性は83%である.
感度には限界があるものの,CA125が卵巣癌再発の指標として重要であることには論をまたないが,臨床的再発がCA125の上昇によって予測された場合,再発に対する治療をいつから行うかについてはまだ明確な結論は出ていない.現在CA125値の上昇した時点からの治療群と臨床所見から,再発を確認したあとの治療群との比較臨床試験が進行中である(EORTCとThe Medical Research Council).また再発卵巣癌の中にはCA125が異常値をとらない症例が10~20%あるため,卵巣癌の経過観察の手段としてはCA125のみに頼るのではなく,CT検査,胸部X線撮影などの画像診断の併用が必要と考えられる.そして,CA125で再発を疑った場合にCT検査,MRI検査などで病変が認められない際には,核医学検査の一種であるFDG―PET(fluoro―deoxy―glucose positron emission tomography)の有用性も報告されている9).
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.