- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 診療の概説
月経痛のために鎮痛剤を使用する婦人は全性成熟期婦人の約1/3と推定されている.また,月経痛を愁訴に医師を受診したことのある婦人は全性成熟期婦人の約1/10であり,そのうち約半数は器質的な月経困難症との診断を受けている.なかでも月経痛で毎周期鎮痛剤を服用しているにもかかわらず効果が減弱してきたような例では,器質性月経困難症(続発性月経困難症 : 骨盤内に器質的な原因があり,月経困難症をみるもの)である可能性が高いと考えねばならない.器質的な月経困難症には,子宮筋腫,子宮内膜症,子宮・付属器などの炎症,子宮後屈症,子宮奇形などがある.
症状は,月経時の疼痛,悪心,嘔吐,食欲不振など機能性月経困難症と同様であるが,器質性月経困難症では,重症化により月経時以外にも疼痛などの症状を持つことがあるので,注意深い問診が必要である.器質的な月経困難症患者の年齢は,機能性月経困難症に比して高齢なことが多いが,子宮奇形などでは初経後比較的早期から発症することが多く,また最近の初経年齢の若年化に伴い性感染症の発生も若年化していること,初経後約2年で子宮内膜症の発症もあることなども考慮に入れなければならない.
診断には,子宮後屈(子宮後屈症,子宮内膜症,付属器などの炎症),子宮の形態異常(子宮筋腫,子宮奇形),子宮肥大(子宮筋腫,子宮腺筋症),付属器腫瘤(子宮内膜症),付属器周囲の圧痛(子宮内膜症,付属器炎),ダグラス窩の硬結および圧痛(子宮内膜症)などの内診時の所見は,器質性月経困難症の診断に重要である.また,経腟超音波断層検査,CT,MRIなどの画像診断,炎症性疾患の有無のための末梢血検査,CRP,ときには子宮内膜症でも上昇することのあるCA125および内視鏡などが有用である.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.