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1 診療の概説
月経困難症とは,月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状をいう.月経の開始に伴い下腹痛,腰痛などの疼痛のほかに,悪心,嘔吐,顔面紅潮などの症状を伴い,月経終了後にこれらの症状が消失するか軽減するものを月経困難症という.一般に月経時にみる激しい疼痛が主な症状となるので,月経痛を月経困難症とほぼ同義語的に使用している.月経痛は全婦人の33%が毎月経周期に,8.3%が隔月に,また5.8%が3~6周期ごとに経験しているといわれ,生殖年齢婦人の日常生活のQOLを低下させる.月経困難症の病態を大別すると,機能性月経困難症(原発性月経困難症)と器質性月経困難症(続発性月経困難症)の2つに分類することができる.
機能性月経困難症(原発性月経困難症)とは,骨盤内に器質的な原因がなくて月経困難症を伴うものをいう.思春期女性にみられる多くの月経困難症はこれである.機能性月経困難症では,子宮発育不全に基づく子宮筋の収縮調節障害や黄体期のプロゲステロン作用の不均衡による月経時の子宮筋の過収縮が起こり,その結果,子宮筋への血流の減少,虚血を引き起こし,疼痛を生じると考えられている.そのほかにも,ホルモン分泌障害,自律神経失調などによると考えられている.
症状は,月経時の疼痛,悪心,嘔吐,食欲不振などである.月経の開始直前または開始よりこれらの症状が出現し,終了とともに症状が消失ないし軽減する.月経と症状の出現,その程度などをよく問診する.原発性の多くは,排卵周期で起こるために基礎体温測定などが参考となる.若年者は,散発性無排卵周期であることも多いので,初経から月経困難症の発症をみたもの,月経困難症が毎周期発症するか,ときにきわめて軽度な周期(無排卵周期)のあるものなども,器質性月経困難症との鑑別に有用な問診事項である.
診断には,月経の開始直前または開始よりこれらの症状が出現し,終了とともに症状が消失ないし軽減するので,月経と症状の出現,その程度などをよく問診する.内診,超音波断層検査,内視鏡などにより子宮筋腫,子宮内膜症,子宮腺筋症,子宮・付属器などの炎症,子宮後屈症,子宮奇形などの器質的疾患を除外することも重要である.若年者の多くは機能性月経困難症であることが多いが,初経後2年ほど経過していると子宮内膜症などの器質性月経困難症も考慮に入れる必要がある.なお,器質的月経困難症との鑑別とともに,月経前緊張症との鑑別にも注意する(後述).
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