今月の臨床 妊娠と薬物―EBM時代に対応した必須知識
妊産婦,授乳婦人での薬物の選択と投与法
3.喘息治療薬,去痰・鎮咳薬
佐野 靖之
1
1同愛記念病院アレルギー呼吸器科
pp.676-680
発行日 2003年5月10日
Published Date 2003/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100925
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はじめに
アレルギー性疾患は現代病ともいわれ年々罹患率が増加の傾向にあり,必然的に妊娠適齢期の女性においても患者は増加している.一方妊娠は女性にとって人生における大きな転機点であり,喜びもある反面,不安感も増し,胎児に対して悪い影響のあるものはなるべく避けようとする本能が働く.喘息を有する妊婦も他の妊婦と同様に胎児への影響を懸念して,喘息の治療を自己判断で減量あるいは中止してしまうことがあり,喘息症状の悪化がみられる場合もある.喘息のコントロールが不良で急性増悪に至った場合には,母体のPaO2が低下し,胎児が低酸素症に陥る結果,母体および胎児にとり重大な合併症が発現する可能性があり,子癇前症,周産期死亡増大,子宮内発育遅滞,早産,低出生体重などのリスクが高まる1).米国NIHは「妊娠中の喘息治療ガイドライン」1)を公表し,妊娠中の喘息治療薬投与による母体および胎児へのリスクよりも,喘息のコントロール不良によるリスクのほうがはるかに大きいと述べており,妊娠中の喘息管理の重要性を強調している.さらに専門医が喘息を適切に管理している場合には前述のリスクは認められないとの報告もあり2~4),通常の喘息患者と同様に喘息状態の評価,喘息増悪因子の回避,薬物治療,患者教育に加え,母体および胎児の状態の客観的評価を行うなど,適切な管理がきわめて重要である.
本稿では妊娠中の喘息の管理とその治療薬,ならびに授乳中の薬物投与について概説する.
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