今月の臨床 ホルモン補充療法を再考する
HRTの将来展望
3.選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)
太田 博明
1
1東京女子医科大学産婦人科学教室
pp.841-847
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100910
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はじめに
エストロゲンを中心に補うホルモン補充療法(hormone replacement therapy : HRT)は,その幅広い効能から閉経後女性の健康管理および生活の質(quality of life : QOL)の向上に対してHRTに優る対応策はないとWomen's Healthに対するgold standard1)として長い間もてはやされてきた.ところが,最近のevidence重視の医学から,HERS2)によって冠動脈疾患の2次イベントの防止が,さらに副次評価項目としての骨粗鬆症による骨折防止が,いずれも否定された.そのうえWHI3)によって冠動脈疾患の1次イベントの防止さえ否定され,さらには乳癌リスクの明らかな増加が報告された.これらのEBMにより,HRTのベネフィットばかりもてはやされてきたきらいがなくもなかったが,必ずしもベネフィットではないばかりでなく,一方でリスクが明確になるなど,閉経後女性のQOL向上のためのツールとして再考を要するようになりつつある.
もっとも乳癌のリスクについては従来から指摘されてきたものであり,その回避策として組織選択的に作用を示す選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(selective estrogen receptor modulator : SERM)の開発・導入がなされてきた経緯4)がある.そこで本稿では,SERMの特徴や効能および問題点につき将来展望などを交えつつ,ウィメンズヘルスにおける位置づけなどについても触れてみたい.
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