今月の臨床 ホルモン補充療法を再考する
HRTの適応を再考する
9.心・血管系疾患
佐久間 一郎
1
1北海道大学大学院医学研究科循環病態内科
pp.822-825
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100906
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はじめに
女性では更年期以降,エストロゲンの低下・欠落により,更年期障害,コレステロール(C)増加,骨粗鬆症など種々の症状が出現するが,虚血性心疾患(IHD)も増加する.このIHDの増加は,エストロゲンの抗動脈硬化作用が消失するためと考えられている1, 2).したがって,エストロゲン補充療法(ERT)やHRTにより,IHD発症が抑制される可能性があり,種々の観察試験でそれが示されたことから,欧米ではHRT・ERTがルーチンに処方され,多くの内科医や循環器医が施行してきた.しかし,観察試験で示されたHRTのIHD発症予防効果は,HRTを受ける女性がより健康に留意し,経済的にも恵まれており,医療を受ける機会が多いなど種々のバイアスによるとの懸念から,無作為化プラセボ対照比較試験(RCT)の必要性が叫ばれていた.実際,HERS3, 4)やWHI5)など最近のRCTで得られた結果は,IHD発症予防にHRTは効果がなく,しかも副作用として乳癌や静脈血栓症の増加が明らかとなってしまった.
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