今月の臨床 思春期のヘルスケアとメンタルケア
思春期診療の実際とカウンセリング
12.性同一性障害―とくに思春期における問題
石原 理
1
1埼玉医科大学産科婦人科
pp.1206-1209
発行日 2003年9月10日
Published Date 2003/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100841
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はじめに
日本精神神経学会「性同一性障害に関する第二次特別委員会」は,平成9年5月28日付の「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」(初版ガイドライン)1)の改訂作業を行ってきた.そして,その結果は「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)」(第2版ガイドライン)として,平成14年7月,学会誌上に発表された2).
この改訂の背景には,メディアなどの好意的報道などもあり,性同一性障害に対する社会の理解がある程度進んだこと,初版ガイドライン以後,臨床家が実際の症例を多数経験したことで,このガイドラインの問題点が浮き彫りになったことなどがある.今回,大きく改訂された部分としては,FTM(female to male transsexuals)に対する乳房切除を,治療の第三段階における性別適合手術(sex reassignment surgery : SRS)から分離し,第2段階に移行したことなどがある.しかし,中でもとくに,第2段階とされるホルモン療法の開始年齢を,初版ガイドラインでは20歳であったものを,18歳に変更したことが注目される.
本稿では,第2版ガイドラインを踏まえて,ホルモン療法開始年齢が変更されたことの背景にある問題,また関連して性同一性障害をとくに思春期における問題としてとらえる必要性を述べるとともに,本邦における性同一性障害に対する診断と治療の現況とその問題点を提示することを試みる.
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