今月の臨床 周産期の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
妊娠管理
4.妊娠中の癒着胎盤の診断法と精度は?
吉田 幸洋
1
1順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院産婦人科
pp.1263-1265
発行日 2003年10月10日
Published Date 2003/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100808
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
妊娠初期,脱落膜内に着床した妊卵から発生する絨毛膜のうち,子宮筋層側の部分は妊娠週数が進むにつれて次第に発育増殖して繁性絨毛膜となり,妊卵着床部位の脱落膜の子宮筋層側の部分すなわち床脱落膜とともに胎盤を形成する.胎盤の構造上,絨毛膜板は付着絨毛によって子宮脱落膜と接しているが,胎盤絨毛の大部分は,脱落膜を貫通してきた螺旋動脈から噴出する母体血が充満する絨毛間腔に浮遊する状態にある.このように本来胎盤を形成する絨毛組織は,子宮壁のうち脱落膜とは接しているものの子宮筋層には接することも進入することもない.
癒着胎盤とは胎盤形成過程における絨毛組織と子宮壁との付着の仕方の異常であり,特に脱落膜が菲薄化していたり欠損しているような部位に妊卵が着床することによって胎盤の一部または全部が子宮壁に強く癒着し,分娩後脱落膜の海綿層で生じる胎盤の剥離が困難となるものをいう.
癒着胎盤はひとたび遭遇すると分娩後の大量出血を引き起こし,対応が遅れれば母体死亡に至ることもある.したがって妊娠中の診断はきわめて重要であるが,妊娠中の診断の方法と精度に関しては一定の見解がないのが現状である.本稿では,最近の文献をもとに,妊娠中における癒着胎盤の診断と精度に関して述べ,癒着胎盤が疑われた場合の対応についても言及する.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.