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はじめに
人間という種には「雄」と「雌」が存在し,すべて生を得て成長し,さまざまな道を歩きながら世のために天職をまっとうし,死に至る.人皆同じといえばそうであるが,概して女性は女性らしい考え方や行動パターンを有しており,女性としての生物学的,文化・社会的存在を感じさせる.逆もまたしかりである.医療においては,男女が同じ疾患名であっても,それぞれのgenderが病態に大きくかかわっていると考えるのが普通であり,社会生活を営んでいる場合,当然のごとく男女の生物学的特性や社会性を意識した治療レジメの選択がなされるべきであろう.
平均寿命の延長,高齢化社会の到来により,更年期世代の健康管理はその後のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)への影響の観点から,重要な問題としてクローズアップされてきた.そして,更年期こそ男女の生物学的,文化・社会的差異が大きくなり,顕在化する時期であるといえる.女性のライフサイクルにおいて,閉経周辺期は身体内外環境の変動が最も大きい時期とされる1,2).同時に,この時期は性成熟期が終焉を迎え,老年期の入り口であるため,女性の精神・心理状況は基本的には退行的,守備的となっている.また,社会構造の複雑化や男女雇用均等法実施後の女性の社会進出につれて,家庭のみならず職場でも更年期女性が比較的強いストレス環境で過ごす時間が増したともいえる.そこで内的外的ストレスの認知や処理の方向性に歪みが生じ,心身への大きな影響が不定愁訴の形で表在化する1,3~5).男性の更年期においても,最近は捉えどころのない心身不調を主体とした病態が「男性更年期障害」とした独立疾患として注目されているが,「女性更年期障害」はその発症頻度と受診頻度において圧倒している.女性は閉経をターニングポイントとして動脈硬化性疾患や骨量減少症が急増する.この要因の1つとして,エストロゲンの分泌衰退が挙げられ,この点こそ男性の更年期世代との大きな生物学的相違である.したがって,それらの病態の治療には性差を意識するのは当然であり,女性により有効性の高い薬剤が用いられるべきであろう.
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