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近年,急増する性器クラミジア感染に対する治療法として,欧米では「クラミジア頸管炎に対するアジスロマイシン(AZM)1,000 mg・単回投与法」が患者コンプライアンスがよく,治癒率も高いことより性器クラミジア感染の第一選択薬となっている.しかし,本法は日本では未だ一般的ではなく,マクロライド系,テトラサイクリン系,ニューキノロン系抗菌剤の7~14日間投与が推奨されている.このような状況下,われわれはAZM 500 mg/日・2日間投与の性器クラミジア感染に対する臨床的有用性について,AZM投与によるクラミジア抗原の消長,自覚症状の変化および副作用の発生を検討した.AZM 500 mg/日・2日間投与は従来の抗菌剤と同等の効果が期待でき,患者の服薬に対するコンプライアンスもよく,性器クラミジア感染症に対する有用な薬物療法の1つであると考えられた.
はじめに
近年,STD(sexually transmitted disease)は広く国民に蔓延し,かつていわれたようにCSW(commercial sex worker)や男性のみの疾患とは限らなくなってきた.STDは性活動の盛んな若者に多く発生するため生殖機能への影響が懸念されるが,特に生殖機能障害をきたす病原体としてクラミジアと淋菌が重視されている1).とりわけ女性では,クラミジアが不妊症,子宮外妊娠,流・早産の原因病原体として注目されている.
本邦での女性性器クラミジア感染者は現在推定80万人で,男性性器クラミジア感染者の2倍以上に上り,特に若年者における発生が顕著である.クラミジアはまず子宮頸部に感染するが,症状が乏しいため受診するのは全感染者の20%前後とみられ,感染がそのまま放置されると1~2週間後には卵管・骨盤腔へと上行感染し,卵管癒着や卵管通過障害を生ずる.さらに感染が進展するとPID(pelvic inflammatory disease)やFHC(Fitz─Hugh─Curtis)症候群を引き起こす2).一方,妊婦の性器クラミジア感染では流・早産や前期破水が発症しやすく,また分娩時では産道感染による新生児肺炎,結膜炎が生じる.
クラミジア感染の診断は,従来,蛍光抗体法や酵素抗体法が用いられてきたが,近年はPCR(polymerase chain reaction)法やLCR(ligase chain reaction)法が主流となっている.他方,クラミジア抗体はIpazyme法,Hitazyme法により測定されるが,これらは単にクラミジア感染の既往を示すにすぎないといわれている.しかしながら,IgA・IgG・IgM抗体の3抗体価を組み合わすことで,現在の感染状況を推定することは可能である.
現在,本邦でのクラミジア感染に対する有効薬剤としてマクロライド系,テトラサイクリン系,ニューキノロン系抗菌剤の7~14日間投与が推奨されているが,欧米では近年「クラミジア頸管炎に対するアジスロマイシン(AZM)1,000 mg・単回投与法」が患者コンプライアンスがよく,治癒率も高いことより,性器クラミジア感染のファーストチョイスとなっている.AZM 1,000 mg・単回投与が患者コンプライアンスの観点から望ましいが,今回われわれは副作用の発現を考慮し,本邦でのAZM投与用量基準(500 mg/日)にしたがい,AZM 500 mg/日・2日間投与(総量1,000 mg)の性器クラミジア感染症に対する臨床的有用性を検討したので報告する.
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